2023年10月、出社の再開に伴う変化を検討する

来月2023年10月から出社するよう上長から部のメンバー全員に指示があった。

目的は部内のコミュニケーションの強化(と聞いている)。
テレワークでできそうな施策を試すことなくこの決定になっているが、そこはぼくの視座から見えていない色々があるかもしれないということで一旦おいておく。

当然テレワークを3年以上継続してきた身からすると色々考えるが、今回は出社すること自体ではなく出社することによって何がどうなるのかを洗い出してみた。

序盤は主観的な内容になるが、後半は客観的内容が濃くなっていくので章ごとに飛ばしてもらって構わない。


目次

生活リズム

わかりやすく変化させないといけないのはまず生活リズム。
今ぼくが働いている環境はフレックス制 / コアタイム10:00-15:00という環境。
つまり、10:00にはオフィスに着いていなければならない。

僕の家からオフィスまでは片道約1時間30分かかる。
つまるところ、だいたい8:30までには家を出なければならない(厳密にはもう少し早い)。

テレワークによりギリギリまで寝られる環境になって3年が経過した結果、若干変動は合ったもののだいたい9:30に起きるような生活リズムになっていた。
更にぼくは朝が弱い。
起きてから30分くらいぐったりしているくらいに弱い。
結論、8:00には起きる必要がある(朝食なんてものはもともとない)。

というわけで、生活リズムは1時間30分前倒しとなり、ぼくは9時間睡眠を取らないと生産性がガッツリ下がるので就寝23:00-起床8:00を目指す形になった。

そんな早い時間に寝付けるのか?そんな早い時間に起きられるのか?
という問題は、何が何でもその時間に起きるようにすることで嫌でも夜眠くなるので解決する。
……させる。

プライベートタイム

先に出社に1時間30分かかると述べた。
当然退社も考えて往復3時間。

これまでは仕事を終え、食事など家事を終えたあとの自由に使えるプライベートタイムは約5時間あった。
おかげさまで、趣味は縦にも横にも広がった。

が、出社することになると単純にこれが2時間まで減る。

1日3時間とはなかなか恐ろしい数字で、単純計算1週間あたり15時間、1ヶ月あたり60時間ということになる。
移動中は当然出来ることが異なるので、今後この時間は体力があるときは読書 / 無いときはスヤスヤタイムに変わる。

自由に使える時間が半分以上減るということで、趣味の取捨選択もした。
読書はそれくらいしかできない移動時間にのみ集中させる。
最近積極的に取り組んでいた趣味であっても優先度下位としてバッサリ切り捨てるなど何を残して何を切るか判断した。
このあたりはやりたいことがはっきりしている中でやりたいこととやるべきことの判断をしたわけだが、元々それなりにはっきり指標が合ったのであっさり決めた。

……切り捨てることにした趣味に投資していたばかりだったのでちょっと悲しいけど。

金銭

お金の話が出たので当然ここにも触れる。

食費

わかりやすいところで生活費――更にわかりやすく言えば昼食費。
ぼくは普段テレワークしているときは9割パスタを食べている。
普通の乾麺99%、自家製生パスタ1%位の割合。
そして作るのは95%ペペロンチーノ。

パスタは5kg2500円程度のものを買い溜めしており、1食100g使うのでざっと50円。
調味料や他の材料を合わせてもだいたい75円で済んでいた。

しかし、オフィス周辺で食べるとなるとそうはいかない。
店、コンビニ弁当などを食べたくなるが物価が上がっているのもあってだいたい600円はかかる。

差額は1日550円、月で11,000円の差額だった。

……思っていたよりでかい。
伝家の宝刀「カップ麺」を召喚するしか無いかもしれない(会社のウォーターサーバーに依存するけど)。

水分

ぼくは周りから見て異常なほど水を飲む。
だいたい仕事中最低2L、多いときは4L飲む。

家ではブリタの浄水器などを使って安く飲みやすい水を確保しているが、オフィスに持っていく訳にはいかない(固定席がないので置ける場所もない)。
元々水道代の数%しか占めていないのでほぼ0円だった。

出社したときはペットボトルの水を買って、飲み干したらオフィスのウォーターサーバーから水を汲むようなムーブを繰り返している。
悲しいのは、オフィスのウォーターサーバーの水が切れているとき。
もう1本ペットボトルを買うことになるのでお金がかかる。
最大300円くらいは使うことになる。

ついでに、眠気対策。

これまではコーヒーを家で淹れて飲んでいた。
ドリップするための豆は300g1200円の安くて美味しい豆(学生時代からのお気に入り)を使っており、1回15g使うので60円かかっている。
これをだいたい2杯飲むので1日120円。

出社するとオフィスの自販機のペットボトルが130円。
家と同じように2本買うと260円。
差額は140円。

これまでと同じ生活をしようと思うと1日440円、月8,800円もの差額が出てしまう。

食費と単純に足して19,800円。
笑えない。

眠気対策に関してもキシリトールガムなどを活用して少しずつコストダウンを目指さないと悲しい未来が訪れてしまう。

在宅勤務手当の消失

弊社ではテレワークする社員に対して在宅勤務手当という手当が支給されている。
会社(使用者)目線からすると、会社のための電気代という出費を社員が出しているのでそれを補填するという目的がわかりやすい。

労働者目線、ここまでの整理で出社するほうが出費が増えることはわりと共通認識になると思われる(会社のための電気代だけで2万円使えるのは逆にすごい)。

つまるところ、金銭的に見ると弊社の場合テレワークとは食費や水分代が浮く上に手当まで出るという不思議な超お得環境であることがわかった。
手当は数千円だが、これまでの計算をあわせて差額を計算すると19,800円+手当代数千円が毎月の可処分所得から減ることになる。

思っていたよりでかい……。

ちなみに、このあたりの制度や手続きについては上長が把握しておらず、最近の趣味の1つとして規定を全部読んでたぼくが指摘して浮き彫りになった。
交通費が都度支給から定期代支給に変わるところなど、地味に金銭に影響しそうな要素があるので毎日出社するのであればちゃんと手続きしなければならない。

体力

テレワークのお陰で完全に運動不足になった体にとって、結構しんどい問題。
少し前から週1出社をしているが、それでもしんどい。

ぼくの場合、通勤時間60時間のうち20時間が徒歩で40時間は電車移動となる。
会社はテレワークを基本としているため自分の固定席がなく、このままだと毎日以下のものをリュックに入れて持ち歩くことになる。

  • 会社PC
  • キーボード(会社に頼んでもUS配列のPCを支給してもらえなかった!)
  • トラックボール(慣れてしまうと抜け出せない)
  • 電源類
  • 文房具類

最低限このあたりなんだが、全部リュックに入れて体重計に乗せてみたら7kgを超えた。
体重の1割より多い荷物を3時間持って移動するわけで、疲労するのも納得した。

ぼくの体力不足は社会人1年目の出社時代から問題として扱っていて、退社して帰宅してから疲れすぎて何もできずそのまま寝る日もあった。
今は色々コントロールできてるけど来月以降が不安でしょうがない。

パフォーマンス

これについては計算が難しい。
作業のパフォーマンスとコミュニケーションのパフォーマンスで考える。
後者は特に個人というよりは組織視点になる。

作業のパフォーマンス

明確に「落ちる」。

弊社オフィスはテレワーク中に色々変動して複数会社の共同オフィスとなっており、社外の関係ない話がめちゃくちゃ聞こえてくる。
というか、電話の声がやたらでかい人など色んな人がいて、全然集中できない。

直近3ヶ月くらい週1出社しているが、出社しているときは基本イヤホンをつけていないと本当に集中できない。

家で仕事をしていると、本当に集中しているときなどはイヤホンで曲を聞きながら作業をしていても集中しすぎてアルバムが終わっていることが気づかないこともあるくらい集中できた。
周辺に人がいるわけではないからTIME TIMERで3分くらい設定して全力で休憩するなどメリハリもつけられた。

出社するとこのあたりのことはまず無理だ。
そもそもコミュニケーション強化を目的とするならイヤホンを使うのは間違いだし(ぼくは同じ空間にいることで生まれるコミュニケーション自体は肯定的である)、周りに人がいる状態でリラックスするにも限度がある。

また、フレックス制おかげで15時以降MTGがない場合は一旦勤怠を切って仮眠してから仕事を再開するような動きが可能だったが、このあたりも不可能になる。

作業の質(集中しやすさ)、休憩の質ともに落ちるのだから作業のパフォーマンスは落ちて当然である。

同期コミュニケーションのパフォーマンス

テキストコミュニケーションは言わずもがな変化はない。
そのため、会議や雑談など通話を扱う同期コミュニケーションに焦点を当てる。

これは更に2つに分けられる。

出社している人間同士のコミュニケーションのパフォーマンス

1つ目は部内――出社している人間同士――のコミュニケーションのパフォーマンス。
これは少なからず向上する……と思われる。
対面コミュニケーションの価値の高さはテレワークを経験しているとそれなりに分かる。
逆算してテレワークでのコミュニケーションは気を使って出社時と同等のパフォーマンスを出せるよう工夫してきたが、それを気にしない人・諦めている人は少なからずいる。

テレワークでは基本的にMTGに作業の成果を持っていくのではなくMTGまでに次の作業者にボールを渡すことが理想だが、出社をするとそのコミュニケーションはある程度マシになるかもしれない。

ところで、今いる組織には数年前にも所属していたことがあり、当時のオフィスは本当に静かだった。
これは社長の思想が強く反映された結果で、リアルコミュニケーションよりテキストコミュニケーションを充実させることで常に記録が残り誰からでも追えるようなカルチャーが浸透していた。
当時確か3-40人くらいのオフィスだった気がするが、オフィスの端でペンを落とすとその音が反対側の端に聞こえるくらい静寂が保たれた空間だった。
初めて行ったときは困惑したが、今となってはテレワークと同じくらい集中しやすい環境だったと思う。

逆に言うと、オフィスで口頭のコミュニケーションをするなら会議室を取らないと難しいくらい静かで異質なオフィスだった。
この社風だったからこそ、2020年1月という超初期段階で全員テレワークに切り替えられたのだと思う。
ただしこれは数年前の話で、今となっては当時のメンバーよりコロナ禍・テレワークになってからジョインしたメンバーの方が多くなっているためただの回顧だ。

社長は今となってはより大きな組織を見る立場となっていて思想の浸透も弱体化しているため、この頃の作業のしやすさは期待できず、逆にオフィスでのコミュニケーションは取りやすくなる……と「思われる」。
確証を持てないのは、ぼくがエンジニアリングとデザインの両方をする立場――IT職にあたる人間であるため。

今のチームはぼくを含めエンジニアリングを行う人間は5人であり、デザインはぼく1人。
少なくともエンジニアリングメンバーへのデザインの思想共有は難しくない。
というか、フロントエンドに当たる要素はぼくが扱うので、他のメンバーには体験とそれに紐づく要件を伝えて設計から考えてもらえば良い。

IT職――特にエンジニアは作業中にコミュニケーションが挟まることを嫌う。
オライリーの「エンジニアのための時間管理術」で触れられている通り、エンジニアは作業のために脳のメモリに情報を広げて手を動かす人種である。
そのため、上に挙げた本には作業中にいかに作業以外の情報が届かないようにするかについて一冊の6割くらいを通して語られている。
エンジニアにとって数年前のオフィスやテレワークの環境はMTGなどを調整できる権限があればある意味理想の環境だと言える。
仕事の仕方でいうとぼくはエンジニアリング・デザインどちらに対してもこの考えに同意する。

デザインに関しては、非IT職であるビジネスメンバーとのコミュニケーションが必要で、ここは出社して対面で会わないと色々ずれる経験をしたので今回の決定の前から重要だと思ったMTGがあるタイミングで自主的に出社していた(出社しても重要なメンバーが遠隔参加だったこともあるけど)。
会議に関するコミュニケーションのパフォーマンスについては変化が実質ない。

会議以外の突発的なコミュニケーション――会話が聞こえてきたり、なんとなく話しかけたり――についても上長は期待しているようだったが、正直ぼくは懐疑的だ。
ぼくを含めIT職のメンバー全員がエンジニア的人種であるとすれば、うるさい(しかも仕事に関係ない会話が聞こえる)環境でイヤホンをつけるなどして周囲の情報を遮断したいのは当然だ。

さらに、現状週1の出社日でもビジネスメンバー同士・IT職のメンバーを巻き込む場合の両方の突発的なコミュニケーションはほとんど起きていない。
オフィスの席も固定席がないため席同士が離れることも起こっているし、そもそもビジネスメンバーが話すときはどこかしら会議室を使っている。
つまるところ、現状のままでは突発的なコミュニケーションは正直期待しづらいし、それを嫌う人種としてはそこを率先して行いたくない……。

オンラインMTGでのコミュニケーション

パフォーマンスは「落ちる」。
自分が出社していてオフィスにいない人と話すのであれば大して変わらないように見えるかもしれないが、はっきり落ちる。

オフィスにはノイズ(他の人の話し声)がある。
オンラインMTGにおいて自分に聞こえておらず相手から伝わってくるノイズは致命的に邪魔になる。
そのため、出社しているメンバーはオフィスの中でMTGするために隔離された環境――オンラインMTGブースや会議室などを探して予約する作業が求められる。

しかし、弊社のオフィスは常に会議室が足りていない。
どこの会議室も空いていないからフリースペースで会議するようなことは頻繁に発生している。
しかも社全体ではなく部単位での出社であるため、会議室などを確保できなかった場合は複数の部をまたぐ勉強会や全社会などでは基本他のメンバーに迷惑をかける存在になる。

唯一の対処法は部外コミュニケーションを減らすことになるが、それは避けたいしおそらく不可能だ。
ぼくが積極的に維持したいコミュニケーションもあれば、外からコミュニケーションを増やそうとする動きも見えている。
オンラインMTGはしづらくなる。
これは明白だ。

まとめ

色々挙げたが、金銭問題の水分と体力問題に関しては会社との交渉(組合とか無いから基本上長経由になるけど)で何かしら改善出来る可能性が見いだせる。

コミュニケーションについては難しい。
積極的に投資として作業効率を落として同期コミュニケーションを増やそうと動くこともできるが、正直そこまでするなら転職を視野に入れる。
オンラインMTGは問答無用でしづらくなる。

テレワークの恩恵をそれが失われると決まったタイミングで気づくことは間抜けだが、今後何かしら気づいたことがあったらまた言語化しようと思う。

最後に。
この出社が決まって周知されるのとほぼ同時に出版された本で気になっている本がある。
GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた – ドキュメントの活用でオフィスなしでも最大の成果を出すグローバル企業のしくみ」という本だ。

この本を読んだ複数の信頼している先輩・知人から「リモートなどに関係なく仕事の仕方を見直すきっかけになる良書だ」と言われていて、ぼくも次の出社日から移動中に読んでみようと思う。

なにか意見などあればTwitterアカウント @_sKawashima まで送っていただけると嬉しい。

ではまた。